誰からも文句が出ないプレゼント交換は何通りあるか?

  • 公開日時: 2008/12/11 23:29
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  • カテゴリ: その他

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【問】
4人の子どもがプレゼントを用意して、だれも自分のものをもらわないようにプレゼントを交換しました。交換の仕方は何とおりありますか。

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いわゆる「順列」の問題ですが、問題の意味をよく考えず、適当にかけ算(?)などで答えを出す生徒さんが大半で、速くできたという生徒さんはたいがい間違えていました。後述するように「数えあげ」が必要になる問題なのですが、このような作業も広い意味では「計算」であって、やり方のよしあしやミスしないためのコツのようなものももちろんあるんです。何の仕掛けもなしに普通にくじびきをすると結果は

*** 4×3×2×1=24(とおり)

になるのですが(これを4の階乗といい、『4!』と表します)、この中には、自分のプレゼントが自分に返ってきてしまうパターンも含まれているのです。では、プレゼント交換が「成功」する結果はこの中にいくつあるのでしょうか??

・・・さっそく数え上げていきましょう。子どもに①~④までの番号をつけ、それぞれのプレゼントを誰に渡すかを1~4で表すことにしますが、

$ ①-②-③-④
$ 1

このように、上と下の番号を同じにしてはいけません。こうすると、

$「ヒロシです。子供会のパーティーで、プレゼントを交換しました。
$ ・・・自分の出したやつが、そのまま返ってきたとです」

ということになってしまいます。ちなみに私は被害にあったことがあります(笑)。確か幼稚園のときだったと思いますが、はじめて「被害者」になってしまって、それがずっと気にかかっていたものですから、その次(確か小2のときだったと思いますが)、同じように子ども会で交換会が開かれたとき、「ひとりだけ自分に返ってきたらどうするんだ?」と言おうとしたことが実はあるのですが、そのときは確かどこかのおばちゃんに「大丈夫、大丈夫」と言いくるめられてしまいました。幸いそのときは自分は被害にあわずに済んだのですが、あとで聞いた話によると、残った子たちで何回かくじびきをやり直していたようです。

・・・余談が長くなりました。

$ ①-②-③-④
$ 2-1-4-3 OK
$ 2-3-1-  ・・・とすると最後に4しか残らず「詰んで」しまいます!
$ 2-3-4-1 OK
$ 2-4-1-3 OK

このように、①が②に渡すときの交換の仕方が3とおり。③、④に渡すときも同じように調べると3とおりずつになって、答えは3×3=9(とおり)となります。

実は、こういうふうに各数字がもとあった場所と全部入れ替わってできる順列のことを

***「かく乱順列」「完全順列」

のように呼びます。中学入試でもときどき出題されていますが、この問題を少し発展させると何と「大学入試」、それも皆さんが名前を知っている難関大で出たことのある問題になってしまうんですよ。

そこで、皆さんがこれまでに学んできた「場合の数」をもとに「確率」という考え方を導入することにします。・・・といっても別に難しくはなくて、基本的には、すべての場合の数を分母に、いわゆる「成功」の場合の数を分子にもってくるだけです。たとえば先ほどの結果から、4人でくじびきをしてプレゼント交換をした場合、誰からも不満が出ない確率は

$ 9/24=3/8[=37.5%]

だとわかります。・・・これって、意外と低いですよね。自分が被害者にならなくても、どこかで誰かが被害者になっている割合で考えると半分以上あるということですからね・・・。人数が4人よりもさらに多くなるとどうなるか?私も同じ「被害者」として、どうなるのか非常に気になります。私の知っている入試問題に出ていたのは、今の問題における「7人」の場合に相当するのですが、それを全部数え上げるのはハッキリ言って「いじめ」です。大学入試で出題される場合でも、6人以上になる場合はたいてい後述の「公式」・・・のようなものを作る誘導がついていますのでご安心を。

とにかく、手始めに5人の場合(5個のかく乱順列)を数えてみることにしましょう。

# (慣れないと時間がかかりますが、実際に数えていくうちに、コツがわかります)

①が②に渡す場合を数えると11とおりになって、11×4=44(とおり)。先ほどと同じようにプレゼント交換の成功率を考えると、分母は5×4×3×2×1=120(とおり)ですから、確率は44/120=11/30[≒36.7%]。あれっ、ほとんど変わらないぞ?もしかして、個数が増えても成功率はほとんど変わらないのでは??

それでは、そろそろ「種明かし」をしましょう。一般の場合を考えるために、n個のかく乱順列の総数をF(n)と表して、nとF(n)の関係を表にしていきます。

$ n F(n)
$ 1  0  ・・・1人でプレゼント交換はできない(!)から0とおり
$ 2  1  ・・・2人だと互いに交換するしかないから1とおり
$ 3  2  ・・・①→②→③→①、①→③→②→①のローテーションしかない
$ 4  9
$ 5 44
$ 6 ??  ・・・あとで計算すると分かりますが答えは「265」です

あえてn=1,2,3の場合を入れているのは、物事をきちんと考えるには簡単な場合についても改めて考え直してみることが重要だからです。これからの学習でもこういうことはよく出てきます。「定義より明らか」なんて言葉を使いますが、皆さんにとっては

*** 頭の体操

と言った方がよいかも知れません。こういうとき、いつも頭を働かせるようにしましょうね。

まずは1人の場合。1人でもし「プレゼント交換」ができるとしたら、それは手品師(?)か、さもなくばドラえもん(?)です。まだ21世紀ですから、ドラえもんはありません。これは「ありえへん」ということになって、F(1)=0です。2人でクリスマスプレゼントを交換・・・するとしたら、皆さんは相手のことを考えてプレゼントを買うでしょう。つまり相手が決まっているわけですから、F(2)=1です。「今日は君のために」とか言って、相手(女性)のために指輪を買ってきたとしましょう。それが私(男性)のところに戻ってきてしまったら、非常に困ります。

・・・するんでしょうか、その指輪。もししたら、「ヒロシ」どころか単なるオカマです。

まあとにかく、コンピュータも使えない昔に、こんな計算を本当に粘り強く続けて、表をつくった秀才がいたんです(ここにいる全員が天才になれるかどうかは分かりませんが、頑張れば秀才になることはできます)。そして、この数の並びを見ていて、ある法則が成り立つことに気づいた天才がいたんでしょうね。

$ n  F(n)

$ 3   2
$ 4   9
$ 5  44 ←4×(9+2)=44!
$ 6 265 ←5×(44+9)=265!

慣れないと少々分かりにくいんですが、あるF(n)を求めるのに、左上の数(n-1)と、上の2つの数の和{F(n-1)+F(n-2)}をかけたら良いのでは?ということが「予想」できます。

*** F(n)=(n-1){F(n-1)+F(n-2)}

このやり方を信じてF(6)を求めると、どうやら265になりそうです。同じように計算していくと、F(7)=6×(265+44)=1854?

実際にそのとおりになるのですが、その理由をこれから簡単に説明します。この説明の仕方を世界で最初に考えた人も、これまた天才だと思います。法則を見つけるのももちろん天才ですが、こちらはそれとはまた違った意味での天才。

ええと、途中、子どもがいきなり暴力的になったり、カッコよくなったりしますが、まあ脚色の範囲内ということで、許してくださいね。

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(n-1)人の子どもがプレゼントを交換しているところに、遅れてn人目の子どもが現れたとします。この子どもも仲間に入れて、みんなでプレゼント交換をするには、どういう方法が考えられるでしょうか。

【1】
まず、(n-1)人のあいだで交換が成立しているとします。遅れてきたn人目の人は、プレゼントが渡されてしまう前に、残り(n-1)人の誰かを・・・たとえばハンマーで殴って気絶させ(汗)、持っていたプレゼントを奪いとります。そうすると、いま気絶している子どもが本来プレゼントを渡そうとしていた相手の子どもがいて、その子はプレゼントをまだもらっていないことになりますから、「今のは見なかったことにしてくれ」と言って(汗)、自分のプレゼントをその子に渡します。
(n-1)人の間で交換するやり方がF(n-1)とおり、そのそれぞれについて、n人目の子どもが「誰を殴るか」が(n-1)とおりずつ考えられるので、交換の仕方は

$ (n-1)×F(n-1)とおり

あります。

【2】
実はこれ以外にも、n人の交換の仕方があります。先ほどと同じように、(n-1)人の間で交換しようとしたのですが、そのときにたまたま1人だけプレゼントが自分のところに戻ってきた子がいるとしましょう。このままだと、その子は「被害者」になってしまいます。が、そこにn人目の子どもが現れるわけです。今後「ヒロシ」として生きていくことを半分覚悟していた(?)この子にとって、遅れて現れた子は言ってみれば「白馬の騎士」のような存在です。
とにかく白馬・・・でなく自転車から降りたn人目の子どもは、「何だい何だい、どうしたんだ浮かない顔をして。ははっそうか、プレゼントがまだ交換できていないんだな。・・・っよーしわかった、いいアイデアがあるぞ。君の持っているプレゼントを僕にくれよ。君には僕のをあげるからさ」なんて長いセリフを言うかどうかはわかりませんが(汗)、プレゼントを交換してくれて、すべては平和的に解決するわけです。
(n-1)人の誰かが一時「被害者」になってしまいます。それぞれについて、残った人数は(n-2)人だから交換の仕方はF(n-2)とおりずつあることになります。よって、交換の仕方は

$ (n-1)×F(n-2)とおり

あります。

【1】と【2】の和を考えると、先ほどの式が成り立つことがわかります。

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このように、いきなり全部を考えようとすると難しい場合でも、このやり方を使うとn=1の場合から順に求めていくことができます(このように、1つの式でなく次々に計算してF(n)を作っていくやり方を「帰納的定義」といい、これは高校で学ぶ内容です)。

大学入試の試験時間中でも、n=7,8ぐらいなら、このやり方にしたがってF(n)を求めていくことができます。nがもっと大きくなった場合も、たとえばコンピュータの表計算ソフト「Excel」などを使えば計算できますね。この授業を機会に、私自身もこの計算式と同等のものを表計算ソフトに入力して、とりあえずn=14まで計算してみました。すると、面白いことに、ある程度以上nが大きくなると、プレゼント交換の成功率は、ほぼ一定の

*** 約36.8%(!)

に近づく(らしい)のです。大学で習う数学まで勉強すればきちんと証明できるらしいのですが、「自然対数の底」(2.7くらいの無限に続く小数で、たいてい「e」と表記される)という数を用いて1/eと表される割合だそうなんです。

 

こんなふうに、ちょっとしたことでも、数学をきちんと使って考えると面白いことがわかったりするのですが、世間一般を見てみると、そういうことをしようとする人が非常に少ないように思います。皆さんが数学を勉強する際は、ただ問題が解けるだけではなく、どうしてその答えになるのか、自分の考えを相手にきちんと伝えられるようになって欲しいと思います。

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完全順列って、いちいち数え上げないといけないのが面倒くさい&難しいです。
でも求めようと思ったら計算で求められるんですね。
知りませんでした。
None さん 2015/01/07 20:45:27 報告
2
順序だてて実際に図に書いて数え上げるよりも公式、計算に頼ってしまう受験生さんが多いですね・・・

公式、計算に頼ってしまうと問題の本質が見えなくなります。
クロアチア さん 2015/04/10 05:25:38 報告